- LIVING -
ゆっくりと目を開けて、飲みかけのコーヒーと燃え尽きたインセンスを見つめる。
どうやら、洗濯の途中でうたた寝をしていたようだ。
「本当に、」
ソファに掛けてあるラグのパッチワークを指でなぞりながら、一人言い訳をつぶやく。
「このソファが眠りを誘うから。」
子供に本を読み聞かせていても、先に寝るのはいつも私の方。
体に優しく沿う絶妙なカーブと座面の深さが、抗えない眠りの世界へと誘うのだ。
クッションを整えて、寝相で少し着崩れたワンピースをぱっぱっと直す。
「そろそろお迎えに行かなきゃ。」
コーヒーをクッと飲み干し、パタパタと玄関へ。
鍵に手をかけた途端にふと気づく。
「いけない、いけないっと。」
ソファのところに一度戻り、共地の紐をキュッと結んだ。