STORY - about 6DIRECTIONS -

店内

 6DIRECTIONS、六つの方角
東西南北、父なる空と母なる大地

その間にある暮らし、日々の営み
私達につながる全ての人、モノ、コトへ
感謝の気持ちを忘れず
この名前を大切に育てていきたいと考えています

6DIRECTIONS店主



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  6DIRECTIONSという名前は以前の勤め先を退職する少し前、信号で停車している時にフッと浮かんだ。それは考えて、考えてようやく搾り出したというよりは降りてきたと言った方がいいかもしれない。一つの羽がヒラヒラと舞い降り、手のひらにふわりと収まるように。

  退職後、妻を連れて三度目の放浪の旅に出た。放浪とはいえ、今回はそれまでのように「ん、自分探しの旅?」って、もっとも嫌いな問いかけをされることはなかった。僕はもうそんな青臭さが香る年齢を通り過ぎつつあったし、何より店をオープンするにあたっての「仕入れ」という大義名分を手にしていた。

 妻との4ヶ月に渡る旅も終盤にさしかかった頃、僕達はアメリカのニューメキシコ州にある、とある町で毎日インディアンジュエリーを探し回っていた。この街のあるニューメキシコと、アリゾナ、コロラド、ユタの4つの州が境を接するフォーコーナーズと呼ばれる土地に魅せられた僕は以前訪れた際、7ヶ月の滞在のほとんどをこの地で過ごした。

  ギャロップは古くからインディアンジュエリーの問屋が軒を連ねる町として知られ、ジュエリーを作ることで有名な部族、ナバホ、ホピ、ズニの居住区からも近いことからこの町を拠点に選んだ。

 ある日、インディアンジュエリーに魅せられるきっかけになったZUNI族の女性アーティストAMY WESLEYの作品を取り扱うトレーダーとめぐり合う事が出来た。思い描いていたアーティストの作品を前にして、やや興奮気味な思いを押さえながら一つづつ吟味していく。石を大胆にあしらったナバホ族のもの、精巧なカッティングが魅力のズニ族のもの。一口にインディアンジュエリーと言っても部族、アーティストによって技法もテイストも異なるのが面白い。交渉も終わり、顧客名簿に仮の店名だった6DIRECTIONSと自分の名前を書き込んだところで担当者が驚いた顔をこちらに向ける。「これが店名か?」「そうだけど、何?」と顔を見合わせる僕らの前からショーケースの方へと向かう。戻ってきた彼は微笑みをたたえながら、見慣れない、やや大きなフェティッシュを僕たちの前に差し出した。

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「これがSIX DIRECTIONSだ。」

「?????」

フェティッシュとはさまざまな石や貝を動物の形に切り出して作られるズニ族のお守りで、それぞれが異なる能力と役割を持つ。その為、人々は狩りに出る時、病にかかった時、各々の願いにあったフェティッシュを身に付けた。フェティッシュの中でもマウンテンライオン、熊、アナグマ、オオカミ、イーグル、モグラの6種の動物はそれぞれが北、西、南、東、天上、大地を守る大切な存在である。そして、それが一つになったデザインのフェティッシュがSIX DIRECTIONSだと教えてくれた。

 

イーグルは神と人間を繋ぐ神聖な動物と考えられている為、SIX DIRECTIONSの中でももっとも上に配置される。オオカミはとても狩りに長けているため、ズニの人々はアンテロープなどの大きな動物の狩りに出かけるときに、オオカミのフェティッシュを携えて行った。アナグマはメディスンマンが薬草を探す際に力を貸してくれるとされ、目的を達成する為の忍耐力や集中力を与えてくれる。熊は最も重要な存在の動物とされ、強い治癒力を持つ。マウンテンライオンは旅人を守ってくれると信じられている。底にはモグラ。モグラは大地の恵を守ってくれ、人間の秘められた力を呼び起こす手伝いをしてくれる。

 これを作ったWilfred Cheamaという作家はSIX DIRECTIONSを作る代表的なアーティストで、その配置のバランス、ひとつひとつの動物の表現、全てが素晴らしかった。そして、僕ら二人はそれを握り締めたまま、迷うことなく購入することを決めた。今、考えると6DIRECTIONSという店名を最終的に決めたのは運命を感じたこの時だったのかもしれない。今日もそのSIX DIRECTIONSは見守ってくれている。欠点だらけの僕にはまだまだフェティッシュが必要だ。

次はいつ旅に出ようか。