突然だが、彼女はエプロンに並々ならぬこだわりを持っている。
料理はもちろんのこと、買い物や掃除、お茶を入れるとき、家事をするときは常に身につけている。
「プロのスイッチが入るんだよね。」と彼女は微笑む。
このプロというのは”我が家のプロ”ということなのだが、
確かにエプロンを付けた彼女の動きには無駄がなく、家のことを知り尽くしているようだった。
おそらく、実際に知り尽くしているのだろう。
家事を任せきりの僕は機会があるごとにエプロンを献上し、
街に出れば厳しい審査に通るようなヤツはいないかと目を凝らしている。
動きやすさや着心地、着脱のしやすさ、素材に見た目に…、審査のポイントは細かい。
今度は今までと趣向を変えて、洋服に近い雰囲気のものを選んでみたが、果たしてお気に召すのだろうか。
空腹を満たす料理と、エプロンを着た姿を想像しながら、祈るように扉を開けた。